救急看護とは

救急看護師の仕事の内容と、活動の現場についてご紹介します。

救急看護の仕事

仕事内容

救急看護とは

救急看護とは「さまざまな状況において突然に生じた傷害または急激な疾病の発症や急性増悪等によって、医療を必要とする人々に対する迅速かつ適切な看護実践をいう」(日本救急看護学会 2022年)と定義されています。
救急看護の仕事は、この定義にあるように救急処置が必要な人々への看護活動と言うことができます。一般に、救急医療施設で働いている看護師の実践と解釈されることが多いですが、医療施設以外(例えばドクターヘリや災害現場など)でも救急看護の実践活動があります。

救急看護師の役割

救急看護の役割は,救急看護実践、調整・管理、教育・研究・政策の3 つに大別できます(表)。
主たる役割である救急看護実践には、次の5つの実践概要があります。

  • ケアの受け手の個別ニーズを、状況(場・緊急性・重症度)と予測性を含めた情報から判断する。
  • ケアの受け手の状況から回復や悪化への変化を予測し、幅広い選択肢の中から優先度に応じた実践をする。
  • 起こりうる課題や問題に対して、予測的および予防的な看護実践とその評価を行う。
  • ケアの受け手が置かれている状況の判断に基づき、起こりえる結果を予測しながら多職種連携の必要性を見極め実施する。
  • 危機的状況にあるケアの受け手の切迫した状況を、周囲の人々への調整を介して支援する。

表 救急看護の役割と代表例

大項目 中項目 役割の代表例
実践 アセスメント・判断
  • 緊急度・重症度の判断
  • フィジカルアセスメント
  • 災害トリアージ
救急処置・介助
  • 応急処置(ファーストエイド)
  • 治療介助
  • プレホスピタルケア
生活行動援助
  • 療養上の世話
  • 生活ニーズへのケア
精神的ケア
  • 患者・家族への心理的ケア
  • エンド・オブ・ライフケア
社会的支援
  • 療養指導
  • 社会資源の活用
調整・管理 環境調整
  • 感染管理
  • 救急医療物品の整備と準備
医療チーム調整
  • 医療者間コーディネーション
  • 救急救命士等との連携調整
継続医療調整
  • プレホスピタルと救急外来との連携調整
  • 在宅医療への連携調整
倫理調整
  • 倫理的問題への対応
  • 医療者間等のコンフリクト対応
看護管理
  • 病床管理
  • 看護スタッフ管理
教育・研究・政策 救急処置・予防措置の指導
  • 医療者・一般市民への救急処置指導
  • 災害対応の指導
教育活動
  • 看護職の育成
  • 他職種への教育指導
研究活動
  • 救急領域の看護研究
医療政策への参画
  • 医療制度・政策への提言
  • 学会活動を通した政策作り

救急看護師の働く場

救急看護師は、救急医療施設で働いています。日本の救急医療施設は、24時間365日救急診療ができるように、患者さんの重症度に応じて初期、二次、三次と段階的な整備がされています。
初期救急医療施設とは、病気やけがの程度が軽い患者さんに対応するところで、休日夜間急患センターや休日外来診療をおこなっているところになります。二次救急医療施設は、初期救急医療施設の機能に加えて、中等症、重症の患者さんにも対応できる施設で、入院の必要な救急患者さんを受け入れているところです。三次救急医療施設は、初期と二次救急施設では対応困難な重症患者さん(心肺停止、重度外傷、脳卒中、心筋梗塞、広範囲熱傷など)を受け入れているところで、救命救急センターと呼ばれるところです。
こうした救急医療施設以外にも救急看護師の働く場はあります。ドクターヘリに同乗して救急看護を行うフライトナース、災害時に現場に急行し、被災者への救急活動を行う救急看護師、海外の災害現場に派遣される救急看護師、救急看護の専門知識を持って教育指導する救急看護師、救急看護の質向上に貢献する研究を専門的に行っている救急看護師もいます。

救命救急センター

ドクターヘリ

救急看護師になるには

救急看護師になるには、まず、看護師の国家資格を取得しなければなりません。看護師の国家試験受験資格を得るためには、看護大学、看 護短大、看護専門学校のいずれかを卒業する必要があります。現在、看護系の大学は増えていますので、大卒の看護師の割合が増加してい ます。准看護学校を卒業して知事試験に合格すれば准看護師になることができますが、救急看護師には高い知識が要求されますので、看護 師資格は必須と言って良いでしょう。
看護大学等を卒業し、すぐに救急医療施設に就職して救急看護師になる人もいれば、卒業後に救急以外の看護経験を積んでから救急医療施 設に移動する人もいます。どちらが良いのか言い切ることはできませんが、救急看護師には、迅速な判断力、高度な知識、確実な救急処置 の技術、適切なストレス対処能力などが求められますので、それなりの覚悟を持って救急看護師を目指して欲しいと思います。
一人前の救急看護師になるには、多くの救急看護経験を積むことも大事ですが、向上心や目的意識を持って自己研鑽に励むことも大切で す。本学会では、救急看護クリニカルラダー(ラダーとは梯子のことで、専門知識や技術を段階的に身につけるためのステップ)を示していますので、こうしたステップを踏んでエキスパートな救急看護師へと成長していくことができます。

救急領域の認定看護師・専門看護師とは

日本看護協会では、認定看護師制度を実施しています。認定看護師は、特定の看護分野において、個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践すること(実践)、看護実践を通して看護職に対し指導を行うこと(指導)、看護職に対しコンサルテーションを行うこと(相談)の3つ役割を果たします。救急看護認定看護師は、認定制度の発足当時からスタートしており、当初より専門性が高い領域として認知されていました。
救急看護認定看護師は、本学会のクリニカルラダーでは最も高いステップⅤのスペシャリストレベルになります。それだけの高い技術と豊富な知識が認定看護師には求められます。
認定看護師以外にも救急看護のスペシャリストがいます。同じく日本看護協会が認定している専門看護師です。救急領域では、急性・重症患者看護専門看護師が活躍しています。専門看護師になるには、看護系の大学院を修了していることが必要です。認定看護師よりも高い知識が求められ、要求される役割も多くなります。

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